県外へ転勤かそれとも・・吉井さんが選んだ農業への道
秋の訪れを感じさせる、少し冷たい風が吹く11月初め。取材に訪れたのは都農町の農家、吉井光孝さんの畑。広々とした畑一面に植えられているのは、収穫を待つたくさんの安納芋です。この畑を含め、5〜6箇所で安納芋を栽培し、その90%がふるさと納税の返礼品、また道の駅にも出荷しています。肥料の配分を考え、減農薬にこだわって大切に育てられています。
ーー農業は何年くらいされているのですか?
「もともとサラリーマンをしていて、その頃から趣味で農業をしてたんですよ。脱サラして(農業一本になって)からは3年目ですね。」
今回伺った畑は、15年程前にご両親の家庭菜園のために購入したもの。お父様が亡くなられた後、使われなくなった畑を活用しようと、サラリーマンをしながら仲間とともに農業を始めました。
車関係の会社に勤めていた吉井さん。あるきっかけで農家への転身を決意します。
「ちょうど会社の転勤と重なって・・それでどうするか考えて地元に残ろうかなと。(転勤先が)県外だったもんで、都農を離れるかとなった時に都農を選んで残りましたね。ちょうど良かったんですよね。時期的に、ふるさと納税(返礼品)の出荷と重なったから。それが、なければ県外に転勤してたかもしれないし・・」
会社を辞める以前から、いくつかの畑を購入していたのだそうです。「いつかは農業するつもりだったんでしょうね。」と、当時を振り返って話してくださいました。
ーー農業はどういったところが楽しいですか?
「一番は収穫の時期ですよね。店頭に出したとたんに、お客さんが手に取ってくれると、さらに。面白いですよね。」
9月〜11月の収穫時期などの忙しい時には仲間に力を借りながら、普段はほとんどの作業を1人でしているのだそう。苗を植えていく作業も、色んな事を考えながら1人で黙々と続けるのが、それもまた楽しい時間なのだとか。笑顔で話すその表情からも、農業への情熱と楽しさを感じます。
都農町の人のための芋作り、安納芋を作り始めたわけ
安納芋は、鹿児島県種子島の特産として有名な、ねっとりとした食感と糖度が高いのが特徴の品種。時間をかけてじっくり焼き上げることでさらに糖度が高くなり、糖度が40度前後にもなるのだそう。
ーーなぜ、安納芋を作り始めたのですか?
「都農町の人たちのために芋作りをってのが(考えとして)あって、市場調査してみたら都農の人達に知名度が高かったのが、安納芋だったんですよ。」
安納芋を含めた5つの品種のさつまいもを栽培、出荷してみた所、その当時一番売れたのが安納芋だったのだそう。その結果を受けて、安納芋で行こう!と決意したのだとか。
この日、収穫間近の安納芋を、実際に掘って見せていただきました。土の中から出てきた、少し丸っこい形のさつまいも。少し肌色っぽい皮の色も安納芋の特徴なのだそうです。この日、取材に同行させてもらっていた子ども達も、「お芋出てきたね!」と触ったり、持ち上げて重さを感じたりと貴重な体験をさせていただきました。
吉井さんのおすすめの安納芋の楽しみ方は、やっぱり焼き芋なのだそう。
「ねっとりしていて、甘いのでそのままがいいですね。蒸すだけでも十分美味しい。お菓子なんかにもいいと思いますけど、シンプルに蒸すのが、美味しかったりしますよね。」
取材に伺った数日後、「道の駅つの」で、吉井さんの安納芋を発見!教えていただいた、おすすめの焼き芋にしていただきました。割ってみるときれいなオレンジ色!口に含むとねっとりしっとりとした食感で「甘〜い!」と思わず笑顔になりました。
また、この甘い安納芋を使って焼酎も作っているのだそう。その名も「尾鈴芋凰(おすずいもおう)」。
焼酎の原料と言うと白い色が特徴の品種、黄金千貫のイメージが強かったので、とても驚きました。濃厚な甘さの安納芋を使った焼酎は、どんな味わいや香りなのでしょう⁉︎普段、お酒は飲まないのですが、とても気になります。県外に住む家族や親戚などへの贈り物にも良さそうですね。こちらも道の駅つので購入できるほか、ふるさと納税の返礼品としても出荷されています。
ともに成長。これから先も安納芋と一緒に
ーーこれからやってみたいことはありますか?
「安納芋を使って、何か作りたいですよね。お菓子もいいし、スープとか・・考えるのもまた面白いね。」
ーー最後に、吉井さんにとって安納芋はどんな存在ですか?
「パートナーですかね。これからも農家で頑張ろうと思うけど、安納芋は外せない!これからも成長していきますよ、安納芋と一緒に。」
少し照れながら答えた吉井さんですが、その思いは、とても力強く感じました。吉井さんのアイデアで、安納芋の可能性がもっと広がるのではないでしょうか?私たちが、あっと驚くような商品に出会える日も近いかもしれません。とても楽しみです。
参加しませんか?安納芋を使った絶品アレンジ料理教室
たくさんの方に、美味しい食材が豊富な農の都「都農町」を知ってもらいたい思いから、東京で活躍中の料理家今井真実さんとコラボレーションし、毎月オンラインで料理教室を開催しています。
年内最後の料理教室は11/21(日)に開催し、「やみつき魯肉ピーマン」と「安納芋のデリ風ホットサラダ」を紹介していただきました。料理のコツやワインのお話も聞けるなど、あっという間のひとときです。今井さんの優しい話し方と笑顔も、とっても魅力的で癒されますよ。ぜひ、参加してみませんか?
・人物紹介
安納芋農家 吉井光孝さん(写真中央)
宮崎県都農町の農家さん。サラリーマンを経て安納芋農家に転身。安納芋を使った焼酎「尾鈴芋凰」を作るなど、安納芋の可能性を広げながらともに成長し続ける。とても笑顔が素敵な優しい方。
インタビュー 古吉裕子(写真左)
都農町在住のママさんライター。3歳児と1歳児の母親。子どもの成長を見ることと、こっそり食べる甘味に最高の幸せを感じる。
ライティング 押川真由(写真右)
都農町のとなり、川南町在住のママライター。中学2年生、小学6年生、2歳児の3人の育児に奮闘中。好きな食べ物は、チキン南蛮。