まちを勇気づけた、トマトのまちの、トマト鍋。

人口1万人のまちの、小さな“文明開化”を見守るメディア『BUNMEI』

人口1万人のまち、宮崎県都農町。

  • 人口減少
  • 少子高齢化
  • まちの過疎化

日本全体が抱える課題を、わたしたちのまちでも同じように抱えています。

脈々と続く「文化」や「まちの営み」を途切れさせないためにローカルメディア『BUNMEI』を立ち上げました。

同時に、2021年1月にリアルな場として、コミュニティスペース「BUNMEI」もオープンします。ここでは、毎月様々なイベントや企画を実施。「BUNMEI」に集うことが、少し先のまちの未来を考えるきっかけになったり、ちょっぴりまちのことがもっと好きになる・・・。そんな場所になれば良いなと考えています。

ここでは、BUNMEIでの取り組みをご紹介。

今回は、1月にコミュニティスペースで実施する料理教室に合わせ、“都農トマト鍋”のストーリーをお届けします。

目次

まちに溢れる、真っ赤な野菜。都農といえば、トマトのまち。

都農町の道の駅を訪れると、まず目に飛び込んで来るのは真っ赤なトマトたち。大きいトマトから、小さいトマトまで、様々な種類のトマトが所狭しと並んでいます。

実は、宮崎県都農町は近くの山から流れ出る美しい水と、海からの爽やかな潮風、暖かな気候と、農作物を育てるにはとても恵まれた土地です。日照時間も長いため、じっくりとトマトを実らせることができ、道の駅には1年中トマトが並んでいます。

地元の人にとっては、都農の野菜といえばトマトを思い浮かべる人も少なくないはずです。

まちを勇気づけたトマトのアレンジメニュー「都農トマト鍋」

そんな、トマトが名産のこのまちで、まちの名物メニューとして、地元民から愛されるレシピがあります。それが「都農トマト鍋」です。

地元のトマトをたっぷり使い、出汁と合わせて作る、トマトベースの鍋。トマトの酸味と、出汁や隠し味のキムチの素の旨味が絶妙な味わいです。地元の人であれば、イベントや学校給食で食べたことがある人もいるのではないでしょうか。

地域の人にとっては身近な「都農トマト鍋」ですが、実はこの鍋レシピが生まれたのは、都農の辛く厳しい過去がきっかけだったのです。

2010年の口蹄疫。街を元気にするために、布団屋女将が立ち上がる。

2010年4月20日、都農町で口蹄疫という、牛や豚などがかかる伝染病が発生しました。その後、宮崎県全土に広がり、経済損失3,000億円以上、農の都と書く通り、畜産が主要産業の都農町は経済的にも精神的にも、大きなダメージを受けました。

畜産農家から牛がいなくなり、外出自粛によって、ただでさえ何もないまちに、人と人のつながりまでもがなくなり、地元の人曰く、地獄のような日々がしばらく続いたそうです。

まち全体に暗い雰囲気が立ち込めていたとき、都農を盛り上げようと立ち上がったのが、現在は布団屋の女将をしている、矢野純子さん。彼女が都農トマト鍋の生みの親です。

矢野 純子さん

ー「改めて、都農町トマト鍋を作ることになったきっかけを教えて頂けますか?」

矢野:『きっかけは口蹄疫です。あの頃都農町は畜産業が盛んだったけど、口蹄疫で1頭も残らず殺処分してしまった。町全体が沈んでいました・・・。それをなんとかしたいと思っていたのが、はじまりです。』

矢野:『そんな時、高鍋(※宮崎の別の地域)で鍋合戦という、鍋料理のイベントがあることを知りました。地元の特産品を使って鍋を作り、味や盛り付けの評価で勝者を決めるローカルイベントです。そのイベントで優勝して都農を盛り上げようと思い、そのときに出来たのが都農トマト鍋でした。』

ひとつの鍋に、地元の想いを詰め込んで。

出典:宮崎県都農町の「つのトマト鍋」

矢野:『鍋合戦に向けてはまず、“都農もりあげ隊”というチームを作りました。まちの特産を活かした鍋を作るならトマトを活かした鍋にしよう、と。その他にも、かぼちゃ農家やニラ農家も仲間に居たから、都農トマト鍋にはかぼちゃやニラも必ず入っています。』

都農トマト鍋には、トマトだけでなく、鍋に入れるには珍しい野菜たちも入っているのですが、それは、当時立ち上がった矢野さんの仲間たちの想いのこもった食材だったのです。

「そして高鍋で行われた鍋合戦では優勝を果たし、山形県で行われた全国の鍋大会『平成鍋合戦』というイベントでも、来場者投票1位を獲得され注目を集めたとお聞きしました。」

矢野:『テレビや新聞でも取り上げられて、ありがたい事でした。イベントや学校給食でも振る舞ったりもして。

それから、もっと都農トマト鍋を広めようと投資して加工所を作ったんです。実は、都農もりあげ隊のメンバーと10年経った今でも、道の駅に卸すレトルト商品を作っています

まちの活力となったレシピを、次の世代へと受け継ぐ。

都農トマト鍋の料理教室を開催します。

矢野:『正直、もう(レトルト等を)作るのをやめようと思ったことが3回ほどあります。私は料理が大好きなのですが、今のメインの仕事は、ふとん屋、洋服店、駄菓子屋なんです。トマト鍋の面倒を見きれていなくて。人手が足りていないんです。

それでもやめないのは、トマト鍋を食べていると元気になって頑張ろうと思えるから。』

ー「今後、都農トマト鍋はどうなって欲しいですか?」

矢野:『おかげさまで都農トマト鍋は10年経った今でも、都農の名物料理として紹介されることがあります。でも私の作るレシピが全てじゃなくて、どんどん変わっていって良い。中に入っている具材も人の好みや時代に合わせて変わっていくべきですよね。BUNMEIでの料理教室では、基本のトマト鍋を教えるので、どんどん皆のアレンジを加えていって欲しいと思っています。』


そんな思い入れの詰まったレシピを、移住者をはじめ若い世代へと受け継ぐべく、「BUNMEI」では開発者の矢野さんを講師に迎え、料理教室を行います。

まちを元気にしようという想いから誕生したレシピは、地域への愛情たっぷりの、心も身体も温まる一品。そんな、メニューを次の世代に受け継ぎ、更に楽しくアレンジしていきたいと考えています!

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