宮崎県日向市が産んだ幻の柑橘 平兵衛酢(へべす)とは?なぜ幻と言われているのか?
宮崎県日向市の特産品「へべす」は、レモンやカボスなどと同じ「香酸かんきつ類」に属しています。見た目は同じ香酸柑橘類のかぼすやすだちに似ていますが、皮が薄いため、果汁率が高く、種が少ないのが特徴です。
また、栄養価も高く、がんの抑制、疲労回復、花粉症や、中性脂肪抑制などにも効果的な成分が含まれています。その他にも、血液をきれいにし、腎臓の機能を改善する機能を持つ「クエン酸」が多く含まれています。
へべすは宮崎県日向市に住んでいた農家・長宗我部平兵衛(ちょうそかべへいべえ)さんが、江戸時代末期に発見しました。以前は柑橘類のことを「酢みかん」と呼んでいたことから“へいべえさんの酢みかん”が転じて、へべすになったそうです。
・幻の柑橘と言われる由縁
平兵衛さんはへべすを、接ぎ木し、苗を作り、地元の農家さんに分けていました。その後、地元では娘の嫁入りと一緒にへべすの木を1本持たせるようになり、へベすは自宅の庭にあるくらい身近な果物でした。こうして長年、地元で愛されていたため、他県に流通する機会がありませんでした。現在でも県外での流通は、ごくわずかだそうです。
大好きな柑橘 平兵衛酢(へべす)を都農町で栽培。みかん農家黒木さんの挑戦。
宮崎県日向市が特産のへべす。そのへべすが都農町に育てられるようになったのは4年前なんだとか。へべすが、種苗法に登録されていることから、日向市以外での栽培が禁止されていたそうです。
しかし、へべす農家の高齢化や、生産量の低下などの原因により、4年前から、宮崎県内での栽培が認められたそうです。
今回は、4年前に都農町でへべす栽培を始めた黒木 崇文(くろき たかふみ)さんにへべすの魅力や、栽培の難しさをお聞きしました。
『へべす農園なんやけど、結構山の上にあるっちゃけど大丈夫?』
そう優しく声掛けしてくださり、案内していただいたへべす農園。
道中、トトロを思い出すような道で、メイちゃんの気持ちになりきり、取材班一同お散歩気分で黒木さんの後をついていきました。
ついた場所は一面のへべすの木。約700本の木があるそうです。
この日はとても天気がよく、風がとても気持ちよかったです。
•みかん農家黒木さんが 平兵衛酢(へべす)栽培に挑戦した理由
黒木さんはもともとみかん農家さんで、4年前に都農町でへベす栽培を始めました。
へべすを始めたきっかけについてお聞きすると、
『もともとへべすを食べるのが大好きやったとよ。やから、
へべすの農家さんとの付き合いもあって、都農町で育てられると聞き、
早速栽培を始めたとよ』
なるほど!「好き」の気持ちはとても大切ですね。
『4年前に始めて、やっと今年出荷できると思っとったちゃけど、カタツムリの被害や、サルの被害とかで中々うまいごと行かんかったねー。来年はがんばりたい』
長年みかんを栽培されている黒木さんでも収穫までには中々難しいのですね。
害虫被害に加え、天候にも左右される農業の難しさを丁寧に語って下さりました。
平兵衛酢栽培のこれから。みかん農家黒木さん農園の今後
『今年は、上手くいかなかったへべす。来年は1本から90%の収穫を目標にしています。』
熱く語って下さった黒木さん。やはり1本からのすべてが出荷できることはないそう。
果汁率が35%ないと商品として出荷できず、果汁率も出荷してから分析をしてもらわないとわからない。
その他、傷がついたり、黄色くなってしまうと商品にならず、この廃棄の部分も商品化できないかと模索中だそうです。
日々の栽培の仕方、肥料の調合などもYouTubeをみて勉強しているそうです。
黒木さんは今年71歳。その黒木さんがインターネットを使って日々勉強されているなんてとても驚きました。今後はインターネットでも販売できるようにしたいと熱く語ってくださいました。
そんな黒木さんの農園の跡継ぎをお聞きすると、
『子どもは娘一人やから、無理かなーとあきらめとっちゃけど、今年23になった孫が継ごうかなと言ってくれたとよ。』
と、とても嬉しそうに話して下さりました。
農業は天候にも左右される大変な仕事なので中々強制できなかった黒木さん。
お孫さんと働ける日を楽しみにしているそうです。
平兵衛酢(へべす)のアレンジレシピ。農家さん直伝のオススメの食べ方
へべす大好きな黒木さんに、おススメのへべすレシピをお聞きしました。
牛乳にへベすをかけ、お好みで砂糖を入れるだけだそうです。
へべすを入れることにより、牛乳が固まり、ヨーグルトのような味わいになるそう。
ぜひ試してみてください。
幻の柑橘平兵衛酢(へべす)を使ったお料理教室
黒木さんのへべすを使った料理教室が10月24日に開催されました。
詳しくはこちらをご確認ください。
プロフィール
写真右
黒木 崇文さん
宮崎県都農町(つのちょう)のみかん農家さん。
代々農家の家系。
日々新しい育て方をYouTube等で勉強。アグレッシブな農家さん。
写真左
インタビュー、ライティング
本多 葵
宮崎県川南町在住のママライター
3歳児、1歳児の母。子どもたちと一緒に美味しいものを食べるのが一番の幸せ。