口コミで広まった、幻の直売所。もぎたて梨の、おいしいひみつ。

知る人ぞ知る、幻の直売所で、もぎたての梨を。

『ほんとは道の駅とかに出したいっちゃけど、手が回らんとよ〜』

嬉しそうに、そしてちょっぴり申し訳なさそうに、そう語るのは、都農町の梨農家の河野郁郎さん。河野さんの梨は、自宅前の直売所でしか購入できないそう。

『おかげさまで、地元の方以外にも県内いろんなところからわざわざ足を運んくれる方も多くて、とてもありがたいです。美味しいって言ってもらえることが何よりのやりがいです。』

私達が取材をしている最中も、道を尋ねる電話もあったり、次々にお客さんが直売所を訪れていました。しかし、河野さんの直売所は、ネットにはもちろんのこと、あまり情報が載せられていません。とても広い梨農園は、河野さんと河野さんの奥さんが中心になり切り盛りされていて、少人数での運営です。以前、情報をWEBに掲載しないかと声がけがあったそうですが、人が殺到するのも大変だからと断ったのだとか。

「贈り物でもらって美味しかったから」など、口コミだけで広がり、知る人ぞ知る大人気の直売所になっています。

営業時間は9時から17時までとお聞きしましたが、売り切れた時はどうされているのかと尋ねると、

『目の前が農園なので、無くなったらすぐ取りに行くとよ。』

なるほど。もぎたての新鮮な梨を買えるのですね。わざわざ買いに行きたくなる理由がわかります。直売所では梨の他にぶどう、11月からは柿が販売されているそうです。

”おいしい”を見逃さない。自分の目を信じて、妥協なしの梨づくり。

ーー河野さんはどうして梨農家を始めたのですか?

『代々農家やって、親父の後を20歳の時継ぎました。先代は戦前天皇にかぼちゃを献上したこともあったみたいです。。』

現在70歳の河野さんは、50年間農業されているそう。戦前から都農の地で代々歴史を引き継いでいたのですね。

ーー河野さんの梨栽培のこだわりを教えて下さい。

『門外不出の肥料作りと、自分の目で収穫時期を見極めることですね。肥料作りに関しては企業秘密ですが、収穫するまで結果がわからんから大変。自分が美味しいって思うものしか出したくないから、収穫時期もすぐ確認できるように、紙は被せないね。紙を被せたほうが虫から守ってくれるっちゃけど、時期がわからんくなるからやめたんですよ』

秘伝の肥料作りと、手を抜かずに、大変な作業も惜しまず一番おいしい時期を見逃さないこと。それが大人気の梨の秘密でした。一般的な梨の糖度は12度程度だそうですが、河野さんの梨は13度と、とっても甘いのが特徴です。

『実際食べてみたら一番わかる』

とその場で梨を収穫してくれ、ご馳走になりました。

食べた瞬間、シュワ、サクッとみずみずしく甘く梨の香りが口にいっぱい。普段食べている梨と格段に違ったのが、濃厚さでした。さっぱりしているのに、ミルキーな味わいなんです。取材班一同、美味しい〜!と、とても幸せなひとときでした。

都農町の梨の歴史

7月から旬を迎える都農町の梨。実は都農町は梨農家さんが多く、とってもみずみずしく美味しい梨がたくさんあるんです。

ーーー都農町の梨栽培はいつから始まったのですか?

『実はこの街は、ぶどうより先に梨栽培を始めたんですよ。この土地は雨も多いのだけれど、下が瓦で、水はけがいい。梨は湿気に弱いからこの土地の特性に合ったんでしょうね。』

都農町と言えば一般的にぶどうのイメージが強いですが、河野さんの農園に行く途中、多くの梨農家さんがありました。地元の人にとっては、メジャーな果物ですが、都農町といえば梨がおいしいよね!と、町外の人にも思ってもらえるように、みずみずしい梨の魅力を伝えていきたいな、と思いました。

都農町自慢の梨の品種、それぞれの旬な時期とおすすめな食べ方

河野さんの農園では、7月現在、早優利(さゆり)と豊水の2種類の梨があるそうです。早優利(さゆり)は鳥取大学が開発した品種で、酸味があるのが特徴。豊水(ほうすい)は、みずみずしく甘味が強いのが特徴です。

こちらも『食べてみるのが一番早い』と食べ比べさせてもらいました。

カットしてみると早優利はりんごに色が似ていて(写真上)、豊水は美しい白さ(写真下)。同じ梨ですが見た目も味も、全く違いました。どちらも美味しいのはもちろんなのですが甘味、食感が全然違っていました。

早優利は豊かな甘みの中にさわやかな酸味のアクセントがあり、食感がしっかりしていました。豊水は食べた瞬間ジュワッと果汁が溢れ、梨の甘さが口いっぱいに広がり、食感もなめらか。

ーーーオススメの食べ方はありますか?

『果物は常温で食べるのが一番甘く感じるよ。生でカットして食べるのが一番だと思います。後はジャムがオススメ。特に豊水は滑らかな舌触りやからとっても美味しいジャムになりますよ。』

つい冷蔵庫に入れがちな梨ですが、採れたてをカットしていただいた時は、とても甘みを感じ驚きました。

梨について丁寧に優しく話してくださった河野さん。帰り際には梨のお裾分けまで頂き、まるでおじいちゃんの家に遊びに行ったようでした。家に帰ると私より真っ先にお土産に飛びつく息子達(笑)とっても美味しく頂きました。

8月は、そんな河野さんの梨を使ったお料理教室が開催されます!普段は直売所でしか手に入らない、幻の梨。今回は、甘みが強いのが特徴の「豊水」を都農町からお届けします。ぜひチェックしてみてくださいね!

■お料理教室告知

都農町と料理家今井真実さんとのコラボオンラインレッスン

「農の都のおいしい食卓」

8/22 10時〜 梨とミニトマトのアレンジレシピ

詳細は、TwitterまたはPeatixから告知いたします。

Twitter

Peatix

人物紹介

河野郁郎さん(写真右)

宮崎県都農町(つのちょう)の梨農家さん。農業を継いで50年。代々農家の家系。取材に行くとまるでおじいちゃん家に来たようにおもてなししてくださるとても優しい方。

インタビュー・ライティング

本多 葵(写真左)

川南町在住のママライター

3歳児と1歳児の母親。趣味は食べること。子どもたちと一緒に美味しいものを食べる時が一番の幸せ。

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