
大きな丸いメガネに、帽子からちらっとのぞく青色の髪の毛。
その日の太陽にも負けないオレンジ色の笑顔でわたしを迎えてくれた。
宮崎県都農町(つのちょう)で農家をしている薄田里実(すすきだ さとみ)さん。
様々な野菜を育てているとのことだが、そのなかでも薄田さん自信作の新玉ねぎを今回はクローズアップする。
人物紹介:薄田 里実
SNSやデザインにこだわり、常に新しい売り方を模索されている薄田さん。
お名前を聞くと、「おいしくない実の里実です。」と自己紹介してくれる
とてもチャーミングな方。
「楽しい!」っていう感情に従うだけ。あとは突き進む。


農業を始めようと思ったのはどうしてですか?



おじいちゃんが、植えてみようかて言って。それでやりはじめたら、楽しくて、楽しくて。



どんなところが楽しいんですか?



直売所の人と仲良くなって、生産者の人たちと喋るのがね。それが、生きがいでやめられないよ。



生産者の方たちと話す機会は、沢山あるんですか?



あるある。出荷の時に大体時間がいっつも一緒くらいになると、直売所で、余ったやつとかそういうのを車に乗せる前に、「これやるわ〜。」って。「それなら私も、おばちゃんこれやるわー。」みたいな感じで、物々交換して仲良くなって。それがたまらん。



確かに農家さんて物々交換で、コミュニケーションとるみたいなのありますよね。



自分ではつくってない野菜をもらって話すのが楽しいよ。



どんなお話をするんですか?



いろいろやけど、最初何も分からなかった時に、市場の先生ていう人がいて、80歳ぐらいの人やっちゃけど、袋の入れ方やったり、どうやって入れればいいかとか教えてもらったり。



80代の方ですか!すごいですね!



そうそう。どれが売れるか。やっぱり、シールがついちょる方がいいとか。その年代の人は道の駅がなかったから、市場やったから。だから、いろいろ工夫した点を教えてもらって。





ちなみにその前は、違う仕事をされてたんですか?



全然違う。独身の時は保育士をしてて、全然農業とか興味なかったよ。



都農町で保育士さんを?



ううん、市内で。



市内でずっと保育園の先生されて。



結婚して、半分だまされて、こっち来たみたいな(笑)。



旦那さんがこっち(都農町)のひとですか?



そうそう。旦那がここで、前の仕事が早期退職とかいうのがあって。じいちゃんが歳やから早く教えてもらうために、ていう話だったんだけど、こんなにすぐ農業をするとは思わなかったから(笑)。



じゃ、市内での生活をやめて、こっちで新しい生活が始まったんですね!



そうそう。それで、こっちに移ってきたら、まずお父さんと、お母さんがインゲンを1番最初に植えてくれて。



どうしてインゲンだったんですか?



いっぱいなるからかなあ。でも、すっごいむずかしくて。わっさーってなって、下に着いたら、曲がるし。



大変やから、やめようって思わなかったんですか?



「あー、大変。」て思ったけど、最初にAコープに出したときに、売れた時の喜びがたまらんて思って。やり始めたら、じいちゃんがいろいろ植えてくれて、それから、スイッチが入った。



それは何年前ですか?



9年前かなあ。



結構前ですね!じゃあ、農業に目覚めて9年目なんですね!



あっという間やったなあ。
無理はしない。楽しく、どうやったら自分らしく売れるか。





女性ひとりで、こんな広い土地を管理することは大変ですよね。



みんな手伝ってくれるし、最初はしんどかったけど、それから、シールを作って。



シール?



薄田ていう漢字が難しいから。





茶色の可愛いシールですよね。



うすださんて絶対言われるから、気づいて見てもらえるようにて思って。それから今に繋がるっちゃけど、「シールが野菜の色と合っててかわいい!」とか、そうやって声かけてもらったり。インスタみて買ってますて言ってもらえると、もうやめられん!て思って。



薄田さんのインスタかわいいですもんね!



可愛くはないけど、それしかアピールポイントがないから。これをいかに使うかって。インスタさまさまですね。



実際、知り合いのママさんも薄田さんのインスタをチェックして販売所に行ったと聞きました。



その方、メッセージをくれて、「いつかお会いできたらいいですね。」って、お話してたところだったんですよ。



インスタの力ってすごいですよね。毎日投稿してるんですか?



無理せず、気が向いたときですかね。ネギの販売のときも、花屋の友達のネットワークがすごいから、知り合いが多すぎて、ひとり10本10袋とか買ってくれて、100本あっという間に売れました。



すごーい!



そこが、「生きがい」ってのもあって、今、自由なことをやらせてもらってるけど、じいちゃんが82で、ばーちゃんが77で元気やからできてる。ほんまに感謝。
なんでもやってみないと分からない。人生そんなもん。





農業って、やはり大変なイメージが強いかなと思うんですが。



確かに休みがない。農業も3kていうて、「厳しい(普通は危険)。きつい。汚い。」やっちゃけど、保育士と農家、両方やってきた私からすると、農家のほうが自由で、融通が効く。



植物を相手にしてるから、例えば体調崩したら、「今日はしんどいなあ。」って思うときでも行かなくちゃいけないのかなと素人からしたら思うんですけど。



そう思った事がなくて、、、。保育士も楽しかったけど、農業はもくもくとやった分だけ結果がみえて楽しいからかなあ。



薄田さんの笑顔から楽しさが伝わってきます!



つくるのは、きつかったちゃけど、収穫して、インスタに載せて。うわーキレイ!てテンション上がって。道の駅に出して、売れて。シール、うわー!映えるわーみたいな(笑)。「よかった!これ作って。」て、毎回思って、ワクワクするっちゃ。



いや、確かにかわいいですもんね。



そうそう!「いや、可愛いわー。」と思って、たくさん売れると、「やったー!」みたいな。んで、売上をみるのが楽しみで(笑)。



商売人ですね!



そうですかね(笑)。



保育士さんで、教育業界でずっと子どもを育てるお仕事をされていたと思うんですけど、実は、植物や野菜を育てるのも好きだったんですかね。



好きやったんでしょうね。



好きなのは、やってから気づいたんですか?



そうそうそう。



だって、保育士の時は、まさか農家として、、、って考えてなかったですよね。



まさかね。最近では、友達からは、がっつり農家やね!て言われる(笑)。



薄田さんは30代のときに、農家の道に進まれて。人生まだまだ、何者になるか分からないですね。



そうそうそう。与えられたもので、なんかチャンスがきたらやってみる。楽しいと感じたら、それを続けると何者かになれるんかな。
一口食べたら、もう止まらない薄田さんの新玉ねぎ





玉ねぎの場合は、種を植えるんですか?苗?



9月に苗を作るポットに種をまいて、それが大きくなって、2ヶ月くらい経って、11月頃に苗を植えるよ。それで、成長して玉ねぎができる。



ポットの中は赤ちゃんですね。



かわいいやろ。そして、こんな感じで、この葉っぱが倒れたら、「収穫していいよ。」ていう合図。





倒れてるのは元気がないってことじゃないんですね。



ピンと立ってるのは、上に栄養が行きよるっちゃけど、中がカッパカパになって、倒れたら、下にバンバン栄養がいき出す!で、どんどんおっきくなる。



そうなんですね!ピンっと立っているものを引っこ抜くのかなと思ってました。



倒れているのに、たっくさん栄養が詰まってるよ。それを抜くのが、めっちゃ楽しい!!



楽しい!!





土の中にどんな大きさの玉ねぎが埋まっているか見えないですよね。
だから、宝探しみたいで楽しい。



昨日、薄田さんの新玉ねぎを食べたんですが、甘くておいしすぎて。気づいたら、3玉食べてました(笑)でも、全然足りないくらい。今日もまた買いにいきます(笑)。
薄田さん流新玉ねぎの食べ方





これって、いつもどうやって食べてるんですか?料理の仕方とかってありますか?



上と下を切って、十字に切って。それから、バター挟んで、ラップして、レンジで五分くらいチンして、最後にだし醤油。



玉ねぎにバターってしたことないです!



じいちゃんたちは、スライサーで、すりおろして、生卵と、鰹節。
血液サラサラになって、血圧が180くらいあったのが、130くらいに下がった!て言ってた。



やっぱり、血液サラサラになるんですね、玉ねぎって。薄田さんはお料理されますか?



料理はするけど、好きではない(笑)。



育てる方が好きですか?



誰かに美味しく食べてもらう方がいいなあ。
農業は「生きがい」


Q: 薄田さんにとって「農業」とはどんな存在ですか?
ありきたりですが、「生きがい」
楽しいんですよね。
保育士に戻りたいとは思わなくて。
自分が「楽しい」って感じることをするって大切じゃないですか。
だから、力仕事も辛いなと思ったことはないです。
自分が楽しいことをして、食べたひとも幸せになって。
それだけで充分じゃないですか、人生って。
私、したいことがあるんですよ。
加工品をつくりたいと思ってて。他にはないものをつくってみたい。
こうやって、これからもずっと、やりたいことを楽しく無理なくしていきたい。
まだまだ、人生これから。
なんでもできるから。
人生を楽しくしてくれる「農業」にはありがとうを伝えたい。
薄田 里実
「自分が楽しいと思うことに素直に向き合う」


真っ赤なネイルに、ブルーの髪の毛。
ノリノリな音楽を身にまとい、玉ねぎの世話をしている薄田さんは、
「自分が楽しいと思うことに素直に向き合う」大切さを教えてくれた。
薄田さんの新玉ねぎはどれだけ食べても飽きない。
それは丁寧に育てて完成された味だけではなく、
薄田さんのポジティブなパワーも一緒に食しているのかもしれない。
薄田さんの新玉ねぎを食べると、シンプルだけど「人生もっと、無理なく、楽しもう」と
前向きな気持ちになれる気がした。
宮崎県都農町川北16534-1
電話番号:09074616882
お野菜の注文に関しては、こちらにお電話ください。
オフショット
今回は都農町のママさんにも同行してもらいました。
今後、農家さんの記事は都農町のママさん目線でも発信できたらと思います。
この日はとても良い天気で、子どもたちも玉ねぎ宝探しを楽しんでいました!






【5/29(土)10:00~オンライン開催】 <料理家 今井真実さんの料理教室>農の都の、おいしい食卓。旬の甘みが詰まった、新玉ねぎ・ミニトマトのアレンジレシピ。


5月29日(土)10時〜12時は、薄田さんの新玉ねぎを使ったお料理教室を開催予定です!
次回の農家さん取材は、都農町の梅農家「黒木幸博さん」です。お楽しみに!