宮崎県の都農町で、元気なおばあちゃんがニラを育てていると聞いた。
そのおばあちゃんの名前は、瀧本泰子(たきもと やすこ)さん。通称、「たきばあ」。

ビニールハウスに着いた途端、はっとした。
たきばあの「ニラ」は、しなやかで、強く、凛とした美しさを纏っていた。
まるで女性のような、その「ニラ」とたきばあは私たちを暖かく歓迎してくれた。

人物紹介:滝本泰子さん
ニラと向き合い続けて約30年。
「自分でできることは全て自分で。」がモットー。
死ぬまで働き続けたいというパワフルなニラ農家さん。

動き続けたい。


お母さんはひとりでニラをつくっているんですか?



そう。ひとりで始めて30年くらいなるかいね。お父さんは病気やから。



お母さんひとりですか!?



子どもも育って、どうしようかなて。それで、当時知り合いがやっちょって。簡単そうやから、やろうて(笑)。



お子さんの育児が落ち着いて、ゆっくり過ごそうと思わなかったんですね。



もともと、お父さんは養豚しちょって、私も何かしたかったんよ。暇がきらいで。夜テレビみるぐらいだったら、ニラ束ねながらテレビみた方がいいやっちゃ。





でも、ひとりで始めようってすごい勇気ですよね。



始めるって決めて、傾斜のある畑を平にして。趣味の時は、サツマイモとか、金のとれんものばっかつくっちょった。



バイタリティーがすごいですね。



ちょうど始めた時は、もつニラブームで。1年間でビニールハウスのもとも取れて。(ふふ)



ちなみに、ビニールハウスはいくらか聞いていいですか?(笑)



200万ぐらいかな。



どうしてニラを選んだんですか?



外の仕事じゃなくて、ニラを収穫して、家の中での作業が多いから楽かなって。トマトとかは、外の仕事やから。テレビ見ながらできる仕事を探しちょった。(ははははは)



(笑)



でも、今まで家庭菜園してたけど、大変さが全然違うわ。虫がはいったり、病(びょう)もはいったり。本当に大変。しまったな〜って(笑)。
たきばあの「こだわり」





ニラはタネを6月に撒いて、9、10月から5月の上旬ぐらいまで収穫してるね。



収穫時期は結構長いんですね。



そうね。生えて、切って、生えて、切って、4回ぐらいとれるよ。





たきばあのニラの特徴はなんですか?



ニラってどんなイメージがある?



ちょっと苦味があるイメージ。子どもの時は、あんまり食べなかった気がします。大人になってから、鍋とか、卵とじして食べるようになりました。



たきばあのニラは違うよ。独特の臭みや苦味が全然ないよ。道の駅とかに行ったら、たきばあのニラじゃないと買えないって言ってくれる人がいるよ。嬉しいねえ。



どうしてですか?



なるべく消毒してないし、ここは高台やから水はけがいいのもあるかな。
ビニールハウスの管理もしちょる。天気がよかったら、陽で先がこげる時があったり。あとは夜遅くなってから、ニラを切るんよ。



え!どうして!?



時間帯によって、ニラの状態が違うんよ。お昼に切ってしまったら、しなしな。だから、夜遅くか、朝早く切ってしまう。



料理教室の参加者さんにお届けする時も朝早く収穫して、なるべく元気なニラをお届けしたいですね!
美味しいのは、白いとこや。





その新鮮なニラを使って、たきばあのおすすめレシピはあるんですか?



これを5センチ切るわ、えのきと醤油と、マヨネーズをかけて
アルミホイルで巻いて、焼いて。これが一番美味しい。
あとは、ポテトサラダに歯応えいれる為に、きゅうりとニラと。



ポテトサラダにニラは初めて聞きました。



あと、葉っぱじゃなくてこの白い部分が、糖度が高いよ。





そうなんですね!いつも、下の部分は多めに切り捨ててました。



たきばあのニラは、白い部分が甘くて、栄養があるっちゃ。
ひとりでやってきたけど、ひとりじゃない。





どんな作業が一番大変ですか?



ビニールかけたりの前準備が大変やね。
紐をかけたり、、、。



お母さんが上に登るんですか!?



ビニールかけるとき、お父さん入院しちょって、私ひとりでかけたっちゃ。



お母さん、逞しいですね。
不安になったり、落ち込んだりすることはないんですか?



生産者の輪があるから、その人らに相談できるよ。
それが、すごく心強い。



みなさん、ニラ農家さんなんですか?



そうそう。だから、病がはいった時もすぐに相談して。
そういう存在は有り難いね。勉強もするけど、分からないことも多いし。



仲間がいるのは心強いですね。



しんどい時が思い出せないのは、みんなのおかげ。
忘れてしまったよ、辛いことなんて。
ニラは「わたし」。


Q: 瀧本さんにとって「ニラ」とはどんな存在ですか?
ニラはずっとつくり続けたいよ。
ビニールハウスが先に痛むか私が先に痛むか。どっちが先に痛むかやね。
ハウスは修理すればいいわって(笑)。
今までの積み重ねで、今は足が痛いっちゃわ。
でも育てるんが、楽しい。作るのが好きやっちゃ。
これがなかったら、私はダメになる。
「ニラ」は、私よ。
綺麗に育てば嬉しいし、
成績が悪かったら、私もしなっとなるし(笑)。
瀧本泰子
ただただ、「ニラをつくることが好き」。行動することに、それ以上の理由は何もいらない。


「どうして30年間もニラをつくり続けてこれるんですか?」と聞いたとき、
たきばあは満面の笑みで、「好きやっちゃ。」と答えてくれた。
そんな真っ直ぐな答えが眩しくて、「好きなことを継続して生きていく。」って実は難しい。
いや、難しく考えてしまっているだけなのかもしれないと、たきばあは教えてくれた気がした。
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