児玉正志|アスパラ農家の「まっすぐ、上を目指す」ということ。

まっすぐ、しなやかに、高く、高く、伸びていくアスパラガス。

上を目指して、迷いなく伸びていくその姿は、ひとりの農家さんの姿と重なった。

雲ひとつない、真っ青な空の下に、アスパラを育てている、その人は立っていた。

アスパラガス農家、児玉正志(こだま まさし)さん。

人物紹介:児玉正志さん

「こだまの恵」というブランドで日本各地にアスパラを。

土づくりにこだわり、みずみずしく生でも美味しいアスパラ作りを目指す。

常に新しいことに挑戦するアスパラ農家さん。

人物紹介:吹田 あやか

株式会社イツノマのライター

好きな食べ物はとうふ。

最近、中古車を買いドライブにはまっている。

キャンプ、山登り、釣り、したいこと盛りだくさん。

すべては土からはじまる。

児玉さん

お、いらっしゃい。まず、食べてみい。

あやか

生でですか!?

ポキッ!(児玉さんは、その場でアスパラを折って、わたしにくれた。)

あやか

え!?柔らかくておいしい!かじった瞬間、水が溢れ出しますね。
アスパラってもっと筋があって硬いイメージでした。

児玉さん

みんなあるやろ。うちはそういうのは絶対ないんよ。

あやか

こんなに違うんだ、、、。

児玉さん

この根っこの中の糖度が30度くらいあるっちゃわ。

あやか

根っこの中にですか。どうして、こんなに糖度が高いんですか?

児玉さん

アスパラっていうのは光合成した栄養分を大量に根っこに持っていくんよ。うちのアスパラは普通のもんと比べたら、ものすごい食べるんよ、肥料を。

あやか

肥料を食べる!?

児玉さん

話にならんくらい、普通の作物の30倍くらい入っちょる。

あやか

肥料って、堆肥とかですか?

児玉さん

そうやっちゃ。栄養がたくさん含まれている土。

あやか

じゃあ土づくりからかなりこだわってるんですね。

児玉さん

そう、それが大変やっちゃ。でも、この土は10年使えるからね。

あやか

具体的にどんなことをされているんですか?

児玉さん

うちのは、腐葉土(ふようど)が入っちょるわね。

あやか

腐葉土ってなんですか?

児玉さん

腐葉土は山にある葉っぱとかああいうのが腐ったものをいれる。これ黒くみえるけどね、ほとんど肥料やとよ。

あやか

そうなんですか。枯れ葉とか木を土にいれてるってことですか?

児玉さん

そうそう、バクテリアの栄養に。うちの肥料は、全部有機質の肥料やかいね。生き物でできてる肥料。

あやか

じゃあ、身体に悪いものは一切入ってないってことですか?

児玉さん

うん、そうよ。ここの土地はもう20何年、有機肥料だけで育ってる土地やとよ。

あやか

全く、化学肥料は使ってないんですね!

児玉さん

堆肥を混ぜたら土の中で活性化してアスパラの好きな栄養分になる。

あやか

アスパラって、苗から育つんでしたか?種を植えるんですか?

児玉さん

種を植えて、根っこがでてきて、、、。ほら、種をまいておくとこういう赤ちゃんがでてくるっちゃわ。

あやか

これ赤ちゃんですか?かわいー!赤ちゃん、いっぱいいますね。

児玉さん

そうそう、これを植えてけば、どんどん出始めるっちゃわ。

アスパラガスとの出会い

あやか

アスパラはいつから育てはじめたんですか?

児玉さん

アスパラ?アスパラはまだ5年くらい。
俺はもともと花作り専門よ、ユリ。

あやか

え!そうなんですか!?
最初は、お父さまがユリをはじめられたんですか?

児玉さん

ユリじゃなくて菊をしよった。でも、花はね、昔は売れたけど今は売れん。で、次に考えたのがユリやっちゃわ。

あやか

そうなんですね、ユリも高級品ですね。

児玉さん

そう、高級品はこのご時世だめやね。
だから食べるもんじゃないといかん。んで食べられるもん何がいいかなー?って考えたら、当時はアスパラガスが将来性があるなーって。

あやか

お花から、食べ物にシフト、、、。

児玉さん

この施設を活かしながら、経費がかからん方法って考えたときは、アスパラガスが出てきた。

コツコツ努力、これに限る。

あやか

ユリをずっと作ってこられて、いきなりアスパラを育てることになったとき、どうしたらいいのか分からないこととかありましたか?

児玉さん

手が回らんちゃわ、やっぱり手を入れんとだめよ。ただ植えとけばいいってもんじゃないかいね。

あやか

そうですよね。。。

児玉さん

ましてや、みーんな自分のところでアスパラ植えちょるひとおるっちゃけど、もう草いっぱいで、かなわんって。(※かなわん・・・大変)。

あやか

草でアスパラがだめになってしまうんですか?

児玉さん

そう、だめになってしまうとよ。専門家でも、手がまわらんとだめってなるんやから、私らみたいな人は油断したら相当、草藪(くさやぶ)になるかいね。

あやか

アスパラの作り方は誰かに教わったんですか?

児玉さん

アスパラはほとんど自分で。んで、そんげ聞かんでもできるようになったね。

あやか

じゃあちょっとずつ試して試して、そして、こんなにみずみずしいアスパラができたんですね。

児玉さん

うん、できるようになったねー。(ふふ)。
今は、手順と工程さえ間違えなければ大丈夫やね。

児玉さん

あとは、収穫も大変やね。

あやか

収穫はどうするんですか?

児玉さん

これがひん曲がっちょかいね。なんでこんなん残っちょかいの。
ほら、長さが足らんわ。

あやか

え!?足りないんですか?

児玉さん

やから明日まで待って、刈り取る。本当はこのくらい必要やとよ。

あやか

ちなみにこの長さは絶対必要なんですか?

児玉さん

これはうちの機械に入るのと、全国のアスパラガスの農家の人たちが収穫する基準の長さが大体このぐらい。

あやか

何センチですか?

児玉さん

大体25、5センチかな?27とか。 おれのは長い方が重さがあるからいいっちゃけど、あんまり長くすると細くなるかいね。
とはいえあんまり短くすると、重さがでらんし、利益にならんかいね。難しい。

児玉さん流アスパラの食べ方

あやか

アスパラはどうやって食べたら一番おいしいんですか?

児玉さん

1番はね、電子レンジがあれば2~3本ラップで巻いてチンとして、塩をふりかけて食べたら、ほんーーーとにおいしい。

あやか

え、そんなに?!(笑)

児玉さん

甘味がどこにも逃げんかいね。

あやか

シンプルな食べ方が一番美味しいんですね。

児玉さん

焼酎と合わせて食べるとうんまい!!(笑)

あやか

えー?!お酒と合うんですか?

児玉さん

もう、ばっちりよ!!お酒と合うかいね。

農家への入り口

あやか

児玉さんはどうして農家になろうと思ったんですか?

児玉さん

嫁さんが立派にかいよ。

あやか

それはもうちょっと具体的にお伺いしてもいいですか?!

児玉さん

仕事とは全然関係ない話じゃかいね(笑)。

あやか

きかせてください!(笑)。

児玉さん

奥さんと出会ったからよ。奥さんの家が農家やったから。一緒に頑張りたかったんよ。

あやか

素敵ですね!!奥さまと本当に仲良しですもんね。

児玉さん

いっつも一緒に、ずっと一緒に働いてるかいよ。

あやか

そうなんですね、じゃあ40年間ずっと一緒に農業されてるわけですね。
ちなみに、農家やめたいなって思った時はなかったんですか?

児玉さん

あるわあ、逃げ出そうと思う時ばっかりよ、農業って。。。そんげ順風満帆じゃねえわあ。

あやか

一番逃げ出したかったときはいつですか?

児玉さん

いつじゃったかいね?(笑)たくさんありすぎて分からんわ。

あやか

児玉さんは何歳から農家さんをされているんですか?

児玉さん

俺は23か24のときかな。俺はヘリコプターに乗っちょったとよ。

あやか

へ!?

児玉さん

自衛隊におったとよ。

あやか

そうなんですか!?おいくつからですか?

児玉さん

19、20とかかな。うん、2年間。

あやか

空の人だったんですか!?全然畑違いですね!

児玉さん

んで養子にはいったとよ、ここ、児玉家に。

あやか

こちらに養子にこられて、そこからお花を育てられたってことなんですね。え、でも、農家という道は児玉さん自身の本当にやりたいことだったんですか?

児玉さん

うん、当時はね。やっぱり将来性のある事業やったとよ。

あやか

40年前ぐらいのお話ですね。

児玉さん

やっぱ時代よね。次から次に波が来るから、そのとき、そのときでどんなに苦境でもやりきれるくらいがんばれば良かったかい。でも次の手を考えんといかん時もあるしね。

あやか

常に時代を読んで、動いてらっしゃるんですね。
つらかった時期はありましたか?

児玉さん

もうずっと辛いわー(笑)。

あやか

そうなんですか!? どういったところでそう感じられるんですか?

児玉さん

単価が下がったら農業はおしまいとよ。

あやか

やっぱり値段の変動が激しいんですね。

児玉さん

激しすぎるかいね。買う人はそんなこと思わんじゃろ?いっつも高いと思うわね?

あやか

そうですね。。。

児玉さん

お花は特に激しい。その点、上がり下がりが少ないという意味では食べ物はある程度需要・供給というのが出来てるから。ユリは何百円もするもんが、高い時はパーって売れるけど逆に安くなったときはマイナスが大きいとよ。

あやか

農家さんもしっかり戦略を練って、時代に沿った動きが必要になってくるんですね。

アスパラガスは「夢」。

Q: 児玉さんにとって「アスパラガス」とはどんな存在ですか?

夢やね。未知の世界やかいよ。

アスパラも今、全国増えてるけど、量的には増えていかんとよ。

はじめる人はいるけど、辞める人達もいるわけやから。

みんな失敗したりして、やっぱり簡単には上手くいかんとて。

その中で自分の物にするには相当努力せんと。

その中で、自分が満足して気に入る、思ったようなものができるのは面白みになるわ。

だから、こういうアスパラができたら、ああ、よし!って嬉しいじゃろ?

自分としても嬉しいし、みんなが食べて美味しい!って言ってくれるのはやっぱりうれしいとよ、つくってる人も

だから、食べてみんというのは自信があるかいいうとよ。

だからやっぱり、アスパラもあんだけみずみずしさにたどり着くまでに、相当勉強して、忍耐力と努力と。

だから一流になるためにはよ、大変。

まだまだよ、死ぬまで戦いよ。

まだまだ夢の続きよ。

児玉正志

まっすぐ生きる。

まっすぐ、まっすぐ、高く、高く、伸びていくアスパラガスは

まるで、児玉さんを見ているかのようだった。

上にいくことだけを考え、太陽に向かって、長くながく伸びていく。

どんな時代が来ても、自分たちのできることを考え、あとは上を向いて進むだけ。

農家という決して簡単ではない世界で生き残っていくためには、児玉さんのような柔軟で、前向きな姿勢が不可欠なのだろう。

そして正志さんに栄養を与え続けている奥さんの存在は、まるでアスパラの味の土台をつくっている土のようだ。

まさに、しなやかで強く、味のしっかりした児玉さんのアスパラは、“児玉さん夫婦”を象徴しているかのようだった。

児玉さんのアスパラガス購入方法

その時期に1番おいしいアスパラガスを選んでお届け!

お問い合わせは以下お電話番号まで。

お気軽にお問い合わせください。

電話番号:090-8414-1835

こちらのお電話番号からお問い合わせください。

今後も都農町のお野菜や、農家さんの思いをお伝えします。次回も乞うご期待!!

執筆:吹田あやか
写真:松山かんき

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